建築原価を削減、調達と設計・施工コストダウンを中心に解説




景況感が大きく改善する中、高収益体質を実現している住宅会社と、資金繰りの厳しい住宅会社の差がより一層鮮明になっています。
これはまさにマネジメント能力の差と言っても過言ではありませんし、利益確保のため、コスト削減を命題にしていない企業はありません

本記事では、住宅マネジメントの重要課題のひとつであるコストダウンをテーマに、調達と設計・施工コストダウンとを中心に解説します。

 

■1.資材の購買コストからみた原価削減

 

その中で大きな要素を占めるのが、資材の購買コスト。
実は、設計をした段階で、コストは7、8割決まっているのです。

ところが、現場や設計の担当者は、現場業務に追われ、新しい資材の供給先の開拓や、コストを意識した発注先の選定、部品の選定ができていません。

そもそも、技術者の購買コストに対する意識が「弱い」、または意識している「つもり」になっているという現場も多いのが実状です。

購買コストを組織的に下げて激しいコスト競争を勝ち抜くためには、調達部門の購買担当だけでなく、発注するモノを決める段階で発注先と接する現場や設計担当者こそ、正しいモノの買い方・交渉術を知らなければなりません。

社長もしくは幹部が、発注担当者はもとより、設計・現場の担当者に向けて、コストダウンの考え方や価格妥当性の評価方法、買い方の技術・交渉術について、説明しなければなりません。

併せて、発注先などと打ち合わせ・交渉をする機会のある担当者のために、具体的なロールプレイングを通じて、基本的な交渉のルールや普段の会話からコスト削減チャンスを見つけ出す術を伝授します。

発注するモノを決める段階からのコスト削減」の可能性がきっと広げられるはずです。

 

まずは、自社の方針、考え方を再度、検討することが大切です。

① 利益率を上げるのが目的
② コストを下げて価格を下げるのが目的
③ コストを下げて価格はそのままでグレードを上げるのが目的
④ 新商品の開発

①から④においても、目標や価格が大きく変わってきますし、会社の規模、完工棟数によっても変わってきます。


■2.基本設計からみた原価削減

 

基本設計の段階で、以下のように自社のルールを明確にしておくことが重要です

定額制の自由設計や規格住宅を展開する際に有効で、下記は参考となります。

・尺崩しは行わない
・基本間取設計の数を少なくする。最大10件が限度
・建物はできる限りシンプルな構造にする。基本総2階
・平面外形は正方形、長方形、L型にする。
・屋根の形は片流れもしくは切妻とする。
・屋根勾配は10分の1から10分の2とする。
・間口・奥行比率は間口1に対し、奥行は1.5にする。
・各部屋の最大スパンは基本4.5m以下にする。
・出窓や屋根の形状を複雑にしない。これは雨仕舞の点からもいえる。
・部屋数を多くして壁や建具を増やさない。
・無駄な廊下を減らして居室を広くする
・床は根太を無くし、構造用合板(厚24mm)貼りとする。
・玄関ドアは片開きとする。引き戸と親子扉は使わない。
・サッシのデザインはあまり凝らない。窓の数も考えて計画する。
・木製建具は製作ではなく、既製品を使う。引戸より開き戸の方が安い。
・各室のドアは片開きドア1箇所とし、洋室出入口の高さは2mとする。
・内装仕上げは用途を考える。
・カウンターは塗装済の既製品を使う。
・和室の大きさは6帖とする。(本格的な和室はつくらない)
・居室の天井高は2m40cmmとする。
・階段は13段または14段上がりとする。
・階段は手すりは内回りにする
・浴室は1616タイプユニットバスとする。
・オープンキッチンにして化粧板の施工を少なくし、照度を確保する
・オプション は最低限の設計とし、積み上げ方式でオプションを検討する(オプションブック)
バルコニー、勝手口、外構、照明、カーテンなど

 

誰が見ても、分かるように明文化しておきましょう。

自社にはどの程度、最低限のルールを設けられているかを確認してみてください。

 



■3.施工からみた原価削減

 

原価管理システムの導入
⇒小物発注においてのロス低減とコスト意識の向上
⇒現場管理の視覚化

産廃処理費の削減
⇒材工発注業者には産廃処理費を負担させる。

環境美化活動の徹底 幹部が現場パトロールを実施

工程の組み直し クリティカルパスの再考
⇒歩掛によっての組み直しを必ず行う
・30坪のタイプではクリーニング迄75日が標準
・外壁工事と内部階段工事を準クリティカルに
・加算工期

基本設計での実行予算を作成 パターンが10であれば全数予算組

万能工の活用を行う

■4.調達からみた原価削減

 

社長が率先して価格交渉を行うことが大切!

調達機能の重要性と役割 を再度認識する。
現状の仕入先の状況を把握することが重要で現状の掛け率を他社と比較しましょう。

調達品の層別の考え

「大項目」
躯体 :基礎・プレカット
外装 :外壁材・屋根・樋他
内装 :住建・ボード・クロス・床材他
設備 :住設・電気関連・トイレ他
仮設 :足場・トイレ・産廃他
補足材、小物等 :金物・ビス・養生材他
オプション :各会社による
労務 :労務費

「中項目」
メーカー :直接取引が可能か
商社1 大手 :直接取引が可能か
商社2 専門商社 :直接取引が可能か
建材屋 :上に何個入っているか?
小売店1 :地元業者
小売店2 :他県業者
NET :通販等

ポイント
出来るだけ川上での調達を行い、川下での調達は小売店もしくはNETを活用代理店レベルでは下がらない、メーカーを巻き込んでの交渉を行う。
大手デトロッパー品の提案を受けるようにする
ビックビルダー品の提案を受ける様にする
直接仕入れ、半間接仕入を受けられる様にする

 

季節商品 特に木材関連は3ヶ月周期でのスケール調達を行う
・プレカットにおける柱材・ベニヤ(床厚板、外壁用、下地用)間柱などは受注棟数や見込棟数により発注、手配を行い在庫管理は仕入先で行う

ビス・構造金物等はプレカット業者や大工とは別手配にし、自社で手配を行い、上記の様に3ヶ月周期で発注・手配する

 



■5.コストダウンの進め方

 

1.主な手順

① プロジェクトの設置 プロジェクト目的(目標)、メンバー、期間を定める(基本6か月)

② コストダウン・スケジュールを決める

③ インフラ整備を行う
・モデル物件を設定、工事範囲、仮基本プラン、仮標準仕様、設備を決める
・現行単価での実行予算書を作成
・コストダウン目標を各工種ごとに割り付け
(調達のみ、材工、手間、市況などグループ化)

④「購買のみ」の業者交渉着手

⑤「材工」工種の見直し着手
・見積を材料+手間+経費に分解して「コストの正体」を把握する
・業者交渉着手

⑥「手間」工種の生産性改善着手
・自社多能工作業の作業内容分析
・生産性アップの工夫 (工期の削減提案)

⑦ コストダウン原資を活用して、より魅力ある商品へグレードアップを図る

⑧ 定期的なコストダウン活動の定着

2.プロジェクトの設置

① 目的 本プロジェクトの目的は、コストパフォーマンスに優れた魅力有る売れる商品づくりにある。併せて積算基準・商品体系・業者交渉などのスキルアップを通じて各人の能力向上を図るものである。

② メンバー
リーダー:幹部
サブリーダー:現場
メンバー:設計、現場、営業

③ 期間
期間を必ず設ける。最低6ヶ月で行う。

④ 運営
毎回、議事録を残し、業者との打合せ記録も残すこと。

3.コストダウン・スケジュール(例)

 

1月 2月 3月 4月 5月 6月
1.プロジェクト設置
2.インフラ整備
3.業者交渉
4.材工見直し
5.手間分析
6.革新の工夫
7.商品見直し

 

4.インフラ整備

① モデル物件の設定
・積算基準のベースとなるモデルを決める。自社で一番多く出ている広さ・仕様の平均に最も近いものでここ3か月以内完工した物件が良い。

② 工事範囲
・本体工事範囲・附帯工事範囲・オプション工事範囲の定義を明確にする。
・本体工事範囲⇒標準基礎、居室照明・カーテンを除く標準仕上・設備、建物外1mまでの配管・配線、標準電気・屋内配管設備。
・附帯工事範囲⇒屋外給排水工事、屋外配線工事、地盤工事、浄化槽工事。
・オプション工事範囲⇒施主希望によるオプション工事(設備機器の変更、他)外構・造園工事。

③ 注意
・モデル物件を設定する作業の中で、自社の設計ルール、品質基準を確認する
・例:設計ルールモジュールは尺(910)か、メーター(1m)か。階高は2,400か、2,650か(階段段数に関係)。廊下幅、階段幅は内法など等。
・例:品質基準、公庫基準の「省エネ・高耐久・バリヤーフリー基準」か、耐震 性能、遮音性能は、保証項目・保証期間は幾らにするか。
これにより複層ガラスのグレード、間仕切壁の仕様、業者保証の取り方などが全て変わってくる。

⑤ コストダウン目標の設定
・モデル物件の実行予算を作成する。実行予算書の鑑にある約20工種を、大つかみに「購買のみ工種」、「材工工種」、「手間工種」、「市況品」の4グループに分ける。根拠は無くてもコストダウン目標▲20%、▲15%、▲10%と割り付け、加重平均してコストダウン目標を決める。
乱暴な様だがプロジェクトメンバーの意識付けに不可欠な大事な儀式であり、不思議とその数値目標はほとんどの事例で達成出来ている。

5.業者交渉
① 最初は簡単な「購買のみ」の業者交渉から始める。
② 交渉準備、手順の詳細は別項「業者交渉マニュアル」に従って行う。
③ 注意
・毎年定期的に声掛けしていく必要が有るのでフェアな交渉に徹することが大事。
・目先の単価だけでなく、性能は勿論、現場搬入・ゴミ片付け・取付後の調整サービス・機動力・協力度など少なくとも現行取引業者レベル以上の対応を含めて評価する。
・代理店レベルでは下がらない、メーカーを巻き込んでの交渉を行う。
・交渉時は最高の業界情報収集の場である。目一杯活用すること。

6.材工見直し
①「購買のみ」の業者交渉の次ぎは材料+手間の業者交渉を行う。
②基本手順は
・材料、手間、経費に分けた見積書の提出。
・業者間の比較。 相見積を最低3社とる。
・実際の「出面」確認と手間代を(日給×人工数)の生産性に分解しての比較。
以上が最初のCD交渉時の成果目標となる。
その後以下の生産性向上策を継続する。
・実際の現場で出面表を取って、見積工数との差異分析を行い、共同でムダ撲滅
の改善を行う。

7.手間分析
① 自社専属(半専属)大工をベースにした生産性アップによるコストダウン。
② 基本方針確認、施工範囲と全体ボリューム、コストダウン目標値。
③ 施工範囲の業務を「工程」を大項目に、「作業」を小項目にして業務フローを作成する。
④ 各業務での現状生産性(人工数、正味時間率、歩掛かり)を押さえる。
⑤ 生産性改善目標の設定。
⑥ 作業リーダーの意識付け、インセンティブの検討、単価アップの検討
⑦ 生産性向上へ向け、仮説→実行→検証→の繰返し。やり方、時間管理の方法。
⑧ 標準作業条件、標準作業方法としての型決め、マニュアル化。

8.商品体系の整理
① 30%コストダウン、20%バリューアップによる「売れる商品づくり」に挑戦。
②「良い商品が売れるわけでは無い、売れる商品が良い商品である」の原則。
③ 顧客層、ライバル商品を商品体系の中で比較研究する。
④「答えを出すのはお客様」の顧客志向の発想と原則を守る。
⑤「価格&価値」のメッセージを明確にお客さんに伝える販売面でのツール・トークの開発、モデル棟完成を軸に逆算で販促戦略の構築が重要。
⑥「コストは設計で決まる」の原則から「躯体」「設備」「仕上」の3分野でムダ排除設計を行う。施工効率を予測した施工効率設計を行う。
⑦“美人商品”ではなく“スマートな商品”を目指す。良いデザインはコストを上げない。
⑧「品質とグレードは違う」。“品質が高い”とは品質のバラツキが少ないことであってグレードが高いこととは違うことを理解する。






ABOUTこの記事をかいた人

京都府出身。大学卒業後、新卒で上場IT商社に入社。 法人向けのITコンサルタントとして業務の効率化、WEBを活用した集客・営業コンサルティングを実施。 その後国内コンサルティングファームにて不動産業専門のコンサルティングに従事。役職はチームリーダー、全国のクライアントの経営顧問をしている。 専門分野は仕事上、不動産・新築住宅・WEB・IT分野などなど。 読書・資格取得・ITツールやアプリ導入などが趣味