住宅ローンが残る不動産が売れないのは何故?どうすれば売れるのか?




マイホームは人生で一番高い買い物ですから、キャッシュでポンと買ってしまう人はほとんどいないのではないでしょうか?

戸建てかマンションかで違いも出てきますが、新築でも中古でも不動産は数100万円~数1,000万円のレベルですから非常に大きな買い物です。

多くのケースでは分割払いを利用したり住宅ローンを利用して購入資金を賄うことになります。

住宅ローンは数十年のローン契約になりますから、マイホーム購入と同時に退職時期までローンを背負った人も多いと思います。

もしあなたが住宅ローンを利用して不動産を購入し、その物件を売らなければならない事態が生じた時、下手をするととんでもない災難になる恐れがあります。

そこで当記事では、住宅ローンが残っている不動産の売却について、リスクやその回避方法をお伝えしていきますから、ぜひ参考になさってくださいね。

 

■住宅ローンが残る不動産は売れない?

 

まず押さえなければならないことは、住宅ローンを完済していない不動産は売りたくても売れないという事実です。

「住宅ローンの契約は銀行などの金融機関との話だし、マイホームは自分の物だから売れるだろう?」と思いがちですが、これは違います。

正確に言えば、売りに出すこと自体は不可能ではありませんが、売りに出したとしても誰も買ってくれないのです。

そのため、ローンが残る不動産は売れないということになるのです。

ローン付の物件が売れない理由は「抵当権」というものが関係するためです。

次の項でこの仕組みを詳しく見てみましょう。

 

■売れない理由「抵当権」とは何ぞや?

 

抵当権は不動産に設定できる法律上の権利の一つです。

住宅ローンの契約をする際には、ローンを提供する金融機関によって対象の不動産に抵当権が付けられるのが一般的です。

住宅ローンの利用にはまず審査に通らなければなりませんが、お給料など安定した収入が見込まれる場合でも、金融機関としてはそれだけでは融資を全額回収できるかどうか担保がなされません。

そこで保険として、万が一ローンの弁済が滞った際には大きな財産である不動産を取り上げることができるようにしておきたいと考えます。

それができるのが「抵当権」で、ローンの設定時には対象不動産に抵当権の設定登記が行われているはずです。

前項で述べたようにこの抵当権が付いた状態でも物件を売りに出すことは不可能ではありません。

しかし抵当権付の物件を買ったとして、もし元の所有者(あなた)がローン弁済を焦げ付かせたら、やはり金融機関によってその不動産は取り上げられてしまいます。

購入者は高いお金を出して買ったのに、抵当物として取り上げられてしまう危険があるということです。

これでは誰も買ってくれませんよね。

売りに出したとしても買い手が付かないので、ローン付物件は売ることができないというわけです。

次の項からはこの抵当権を外して市場で売れる状態にもって行くための方法と手順を見ていきます。

方策はいくつかあるので、それぞれ確認していきます。

 

■アンダーローンなら売却代金で賄う

住宅ローンの残債が残った物件の場合、売りに出す時点でアンダーローンであるかオーバーローンであるかが大きな運命の分かれ道になります。

アンダーローンというのは、対象物件の売却代金よりもローンの残債額が小さいケースをいい、オーバーローンは売却代金よりもローン残債額の方が大きいケースをいいます。

アンダーローンであれば売却代金によってローンの残債をカバーできるので、売却が可能になります。

オーバーローンとなる場合はローン残債額を賄うことができないので売却はできないということになります。

想像するとゾッとしますが、例えばローンの弁済資金が枯渇したことを理由に売却するケースでは、オーバーローンで売りたくても売れず、かといってお金がないので弁済もできず、近い将来家を抵当で取られて住居を追い出されるという結果が待っています。

アンダーローンであれば売却は可能になりますが、実務上は通常の売却と違って一定の工夫が求められます。

この点を次の項で確認します。

 

■アンダーローン案件で売却する場合の手順

 

物件の売却代金でローンを清算したい場合、ちょっと厄介な問題が生じます。

冒頭で確認した通り、抵当権が付いた不動産はまずこれを外してからでないと売ることができません

売却代金で賄うといっても、まだ売れていない段階ではローンの完済原資がないので金融機関は抵当権を外してくれません。

まるで卵が先か鶏が先かの状態で矛盾していますね。

このままでは結局売れないので、いくつかの工夫が必要になります。

まずはローンを提供した金融機関と折衝し理解と協力を取り付けておく必要がありますが、買い手との契約上でも相手の理解が必要です。

物件の購入側としては、抵当権が付いた状態の物件は買いたくありませんが、現状ではまだ抵当権が付いたままで、これは登記簿を見れば明らかです。

そこで売買契約上では、売り主がその責任で抵当権を外した状態の綺麗な物件を引き渡すことを売買契約成立の条件として設定します。

もし抵当権を外すことができなければ売買契約自体が成立しないので、この意味で買い手側のリスクを担保することができます。

一方で、売買代金の支払い完了を物件の引き渡しと同時に行うことも契約条項として盛り込みます。

代金は分割払いで支払われることが多いですが、最後の残金は物件引き渡しと引き換えに同時に行うことでさらに買い主のリスクが担保されます。

では同時に行うとはどういうことなのか、一例を挙げてその手順と流れ見てみます。

 

1、
物件の引き渡し時に、売り主、買い主、仲介不動産業者、司法書士、金融機関のローン担当者など関係者が、ローンを提供した金融機関に集まります。

2、
買い手が売り主の口座に振り込むなどして、購入代金の残額を支払います。

3、
売り主及び金融機関のローン担当者が振り込みを確認し、口座に入金がなされた時点ですぐに残ローン分の引き落としを行います。

これでローンの弁済ができたわけです。

4、
金融機関から抵当権の抹消手続きに必要な書類が交付されます。

5、
司法書士が上記の書類を持ってすぐさま法務局に出向き、抵当権の抹消登記を行います。

これで抵当権の付いていない綺麗な物件となりました。

6、
売り主から買い主に物件の引き渡しが行われます。

 

個別ケースで若干手順が異なることがありますが、概ね以上のような流れで抵当権付物件の売買取引が進行します。

多くの場合、上記は全て同日内に行われます。

 

金融機関としては本当にローンの弁済をしてもらえるのか、買い手としては本当に抵当権のない綺麗な物件を手にすることができるのか不安なので、全ての手続きは日をまたがずに同日に行うのが基本です。

関係者が協力し合って進めることでスムーズな売却が望めるわけですが、売り主としては売買契約に進む前の時点で注意しなければならないことがあります。

 

■アンダーローン案件で売り主が注意すべき点

ローンの残債を物件の売却代金で賄うには、ローンの残債を超える金額で売れるという保証がなければなりません。

通常売却に臨む前には複数の不動産業者に見積もりをしてもらって、査定額の提示を受けるはずです。

 

しかしこの査定額はあくまで市場で売れそうな予想額であって、必ずその金額で売れることが保証されているわけではありません。

従って、買い手が付く前の段階で実際に売れるであろう価額をできるだけ正確につかむことが成功のカギとなります。

中には高めの査定額を提示して契約を誘う業者もいるので、売り主としては査定額の信ぴょう性を正しく判断して、ローン残債をカバーしたうえで確実に売却を成功させることができる業者を見極める必要があります。

自分でもある程度の相場を掴んでおく、できるだけ多くの業者に見積もりをしてもらい査定額の平均値を割り出してみるなどして信頼性の低い業者を排除したうえで、できるだけ高額で早期に売却を決めてくれそうな優良業者を選べるようにしなければなりません。

 

■オーバーローンの場合はどうする?

 

物件の売却代金でローンの残債をカバーできないオーバーローンの場合、ケースによっては家を失うなど最悪の状態に進むこともあります。

家を売らなければならない理由や売り主の環境によっても可能な手段は異なりますが、オーバーローンでも何とかして物件を売る方法を考えてみます。

 

①自己資金を投入して事前完済

もし手元資金に余裕がある場合は事前に繰り上げ返済を行ってローンを完済し、抵当権を外して売りに出すこともできます。

一番シンプルで確実な方法ですが、住宅ローンの繰り上げ返済には一定の手数料がかかります。

金融機関によって手数料形態は異なるので事前に確認が必要です。

またローンの繰り上げ返済には、月々の返済額を減らすことができるタイプと返済期間を短縮させることができるタイプがあります。

資金的な余裕や収入の多寡によってどちらを選択した方が良いかは変わってきますし、タイプによっては利息の負担も変わってくるので個別の状況を見てケースごとにどちらを選択するか精査が必要です。

いずれにしても自己資金があれば繰り上げ返済ができますが、手元の自己資金が無い場合は何とかして原資を捻出しなければなりません。

手元にない原資の確保方法としては以下を検討できます。

 

②生命保険の解約返戻金を使う

生命保険の商品によっては解約返戻金を受け取れるタイプのものもあります。

比較的まとまった資金源とすることができるので、利用できるものが無いかチェックしてください。

解約返戻金を受け取るとその生命保険は解約扱いとなってしまうので、以後は保険としての機能が無くなりますから、この点は検討が必要です。

必要に応じて保険の見直しなどのプランニングを要します。

 

③解約者貸付制度を検討する

解約返戻金を目当てにすると保険としての機能が失われてしまいますが、契約者貸付制度を利用できれば保険の機能を残すことができます。

解約者貸付制度は解約返戻金を担保にした貸し付けで、概ね返戻金の8割程度までの貸し付けを受けることができます。

貸し付けですので利子を付けて返済が必要になりますから、この点は注意が必要です。

それでも、目的の不動産が売れることでこちらの返済原資も賄える場合は十分検討の余地があります。

 

④退職金の前借り

会社によっては退職金の前借りの相談ができることもあります。

前借り制度の有無や条件等のルールが異なるので、事前に確認が必要です。

退職金については「前払い」の制度もありますが、前借りとは全く違うものです。

前払いは将来の退職金を現在の給料に上乗せして、給料ベースで支給を受けるものですので、不動産売却の自己資金の確保手段としては不適当です。

 

⑤親や親族、友人からの借り入れ

あまり気が進まないと思いますが、どうしても手元資金を用意できなければ親や親類を頼るという選択もあります。

浪費やギャンブルなどと違って、不動産を売るという一時的な目的のための借り入れですから心理的な障壁は意外と高くないことも多いです。

住宅ローンの弁済ができないと不動産が売れないこと、売れればそこから借り入れの返済も可能になること、もし不動産が売れないと最悪抵当に取られてしまう危険があることを上手に伝えることができれば、一時的なピンチをしのぐために手を貸してくれる可能性は高いです。

友人については親類よりはハードルが上がりますが、人数をあてにすればひとり頭の額が小さくても利用価値のある金額にできます。

以上の様な手段で確保した資金を不動産の売却代金に上乗せしてローンの残債をカバーできれば、売却が可能になります。

 

■手を出さない方が良い手段

こここでは自己資金の確保手段としては危険なものを確認します。

 

①消費者金融からの借り入れ

一般的に消費者金融は金利が高いので検討対象には入れない方が良いです。

不足資金額を考えて、端数的に数万円~十数万円程度を賄うのでれば別ですが、結局こちらの借金の返済に苦しんで金利利息分が雪だるま式に増える危険があります。

 

②個人ファクタリング

ファクタリングは企業間取引の債権を現金化する手法として最近認知度が高まっていますが、これを個人に応用した「給料債権ファクタリング」なるものも登場しています。

手数料が非常に高く採算が非常に悪いことや、怪しげな業者もいる可能性があるので、手を出さない方が無難です。

 

③ヤミ金

ヤミ金は単に利息の高い貸金業者ではなく、計画的に利用者を追い詰めるのが目的ですから、どのような理由があっても手を出してはいけません。

ヤミ金を利用するくらいならば抵当で家を取られた方がまだマシです。

 

■まとめ

 

この回では住宅ローンが残る不動産の売却について見てきました。

ローン付物件は抵当権のためにそのままでは売ることができないので、抵当権を解除できる道筋を付ける必要があります。

売却代金を使ってローンの弁済と抵当権の解除を同時進行で進めることもできますが、これはアンダーローン案件でのみ可能です。

 

同時進行では契約上の工夫や取引進行上の実務で一定の工夫が必要です。

自己資金を投入して事前にローンを完済することもできますが、これが無い場合は資金の調達方法を色々と考えなければなりません。

この回でもヒントになる手段をいくつか紹介しましたので、参考にして頂ければ幸いです。




ABOUTこの記事をかいた人

京都府出身。大学卒業後、新卒で上場IT商社に入社。 法人向けのITコンサルタントとして業務の効率化、WEBを活用した集客・営業コンサルティングを実施。 その後国内コンサルティングファームにて不動産業専門のコンサルティングに従事。役職はチームリーダー、全国のクライアントの経営顧問をしている。 専門分野は仕事上、不動産・新築住宅・WEB・IT分野などなど。 読書・資格取得・ITツールやアプリ導入などが趣味