不動産を売ったら贈与税が課税された!?不動産と贈与税の意外な関係




 

不動産を売却する時には不動産譲渡所得税を気にしなければなりませんが、実は「贈与税」という税目も大きく関係してきます。

 

贈与と関係ないと思っていた不動産取引のケースで贈与税が課税されることもあるので、驚かれる人も多いです。

 

不動産売却と贈与税の関係はしっかり理解しておかないと非常に危険な「落とし穴」にはまる可能性があるので、不動産オーナーの方にはぜひ知っておいてもらいたいと思います。

 

不動産業者の営業マンも、顧客に有効なアドバイスができれば重宝されるので知識として覚えてくといいですよ。

 

この章では不動産売却と贈与税の意外な関係や落とし穴について解説していきます。

 

 

■そもそも贈与税とはどんな税金か

 

基本的に贈与税は、ある財産を個人が他の個人へ無償で譲った時にかかる税金です。

 

個人から法人への贈与は法人税、法人から個人への贈与は所得税という別の税目が適用になります。

 

日本の税金は「利益」に対してかけられるものが多いですが、贈与税も財産の授受で利益を得る受贈者(財産をもらった側)に課税されます。

 

贈与は契約の一種であるため、財産を譲る側と貰う側双方が合意しなければ贈与は成立しません。

 

例えばAさんが「Bに金1000万円をあげる」とか、「Bに不動産Xの持分50%をあげる」と意思表示しても、Bさんがこれを承諾しなければ贈与は成立しません。

 

Bさんが承諾すれば契約が成立するので、Bさんは貰い受ける財産の価額に応じた贈与税の支払いが必要になってきます。

 

具体的にどれくらいの贈与税がかかるのかは後の項で説明しますが、皆さんにお伝えしたいのは「贈与した覚えがないのに贈与税が課税されてしまうことがある」ということです。

 

これは非常に怖い落とし穴です。

 

なぜこのようなことが起こるのかというと、贈与と贈与税は別の法律で規定されているため、それぞれ定義が異なるからです。

 

贈与(贈与行為そのものや贈与契約など)については民法で、贈与税の取り扱いについては相続税法という法律で規定されています。

 

ちなみに「贈与税法」という法律はありません。

 

なぜ贈与税なのに相続税法に規定されているのかというと、もともと贈与税は生前に財産移転を画策することで相続税を逃れようという、相続税逃れを規制するために作られた法律だからです。

 

相続税と贈与税は一体として運用する必要があることから、相続税法の中に統一されることになった経緯があります。

 

そして、その贈与税の徴税実務は税務署によって運用されていますから、「できるだけ税金を取るにはどうするか」という視点で考えられています。

 

私たち一般の国民からすると「これも贈与になるのか」と見落としがちなものを捉えて課税してくることがあるので、知識として知っておかないと思わぬ税負担を課せられてしまう恐れがあります。

 

ここら辺を次の項で見て行きます。

 

 

■税務署はここを見る!贈与税の対象になる行為に注意

 

ポイントは「実質的な財産の移転」をどう捉えるかです。

 

以下のような行為は実質的な財産移転があり贈与がなされたとして、対象となる利益が贈与税の課税対象になります。

 

①低額譲り受けによる利益(低額譲渡)

 

親族間では一般の取引と違い、何らかの財産を特別に安く譲ってあげることはよくあります。

 

不動産であれば息子夫婦の定住のためだとか、親族の事業運営を助けるため、その他色々な目的で、不動産を気持ち程度の安い価格で譲ってあげることはありがちです。

 

あくまで親族としての善意から安く譲ってあげたいというのは自然な気持ちと言えます。

 

この場合税務署がどこに目を付けるのかというと、「取引に際して交付された対価と市場価値とのかい離」です。

 

例えば、親が市場価値2000万円の家を息子夫婦に100万円ぽっきりで譲ってあげたとします。

 

息子夫婦は2000万円の価値のある財産をたった100万円の負担で手に入れたことになります。

 

すると税務署は、息子が「市場価値との差額である1900万円の利益を手に入れた」と解釈し、親が子に1900万円を贈与したとみなして、ここに贈与税を課税してくるのです。

 

これは不動産でなくとも別の財産でも同じです。

 

例えば車や有価証券なども同様の理論で贈与税の対象になります。

 

不動産業者の担当者の方は、お付き合いのある顧客が「こんどワシの家を息子に安く譲ってやりたいんだが」などと相談を受けたら、低額譲渡のリスクについて説明してあげてください。

 

②不動産名義の変更

 

 

親子間では日常の約束事などは契約書を作らないこともあるでしょう。

 

一切の対価を発生させずに、不動産登記簿の所有権者を書き換えた場合はどうでしょうか。

 

「わしも年だから、今後はお前が家を管理してくれ。登記簿も書き換えておくから」というようなケースです。

 

 

この場合、税務署はこの親子の行動を把握できないようにも思いますが、実は法務局と税務署は連携しており、登記簿の内容に課税の可能性がある変動が出た場合は税務署に通知される仕組みになっています。

 

名義が変わった=所有権者が変わった=取引がなされたはずと税務署は見ますので、取引にかかる不動産譲渡所得税や贈与税が納税されたかどうかの履歴をチェックします。

 

当該の納税歴がなければ「お尋ね」を出して、取引の実態を見て必要な納税を促します。

 

反応が無ければ、必要に応じて強制力を持って課税をかけるというスタンスになります。

 

③扶養義務を超える援助

 

もともと親子間や兄弟間など一定の親族間には民法上の扶養義務がありますから、その範囲であれば財産の贈与行為も課税対象にはなりません。

 

食費や一定の生活費程度の援助は扶養義務の範囲と考えられるので課税されないことになっています。

 

しかし例えば名目上は食費や生活費として援助された資金でも、それを貯めて住宅を購入した場合は、実質的に住宅が贈与されたとみなされることがあります。

 

住宅を贈与することは一般的に扶養義務の範囲を超える行為と考えられるので、上記の援助資金の価額が贈与税の課税対象になってきます。

 

④債務免除益

 

本来弁済すべき債務を免除され支払いが不要になった場合、債務を免除してもらった分を実質的な利益とみなして課税対象にするものです。

 

分かりやすく現金の貸し借りを例に挙げれば、AさんがBさんに500万円を貸して、半年後に返す約束をしたとします。

 

その後AさんはBさんに「やっぱりあれ返さなくてもいいよ」と債務を免除したとします。

 

するとBさんは本来弁済が必要な500万円分を儲けたことになりますから、これを贈与税の課税対象にするわけです。

 

不動産の場合、例えば形式上は親子の間で契約書を交わし、正しい市場価値5000万円で売買取引をしたとします。

 

市場価値での取引であれば、子に実質的な利益は生じませんから贈与税はかかりません。

 

 

しかしこの場合、親の側には5000万円分の不動産譲渡所得税の申告があるはずです。

 

特例等で税負担が無くても申告だけは必要ですから、こちらの申告履歴をチェックして無ければ「おかしいぞ。債務免除されたのでは?」と税務署に気づかれることになります。

 

そこから捜査を行い、必要であれば子に贈与税を課税するわけです。

 

ちなみに、親の土地を子がタダで借りてそこに家を建てるというケースがよくありますが、この場合の贈与税の課税関係についてはどうでしょうか。

 

無償で貸し借りすることを「使用貸借」といいますが、その地域で借地権の設定について権利金等が発生する慣行があるとすれば、子はその権利金の支払いを免れる分、利益を得ているとも考えられますね。

 

実質的な利益に課税するという目線では贈与税の対象になりそうです。

 

しかしこのような場合、子について贈与税が課されることはありません。

 

これは相続税評価額との絡みで、使用貸借の借り受け人の権利は弱いため評価額が0であることに由来します。

 

 

 

■法改正で贈与税率が変わった

 

では贈与税が課税される場合、どれくらいの負担になるのか見てみます。

 

贈与税の税率は近年の法改正でルールが変わっていますので、この点も合わせて確認します。

 

まず、贈与税には基礎控除枠が用意されていて、一定額までの贈与であれば税金がかからないシステムになっています。

 

ただ相続税と違って基礎控除枠は小さく、年間(その年の1月1日~12月31日まで)120万円までとなっています。

 

基礎控除は贈与者(財産を贈与する者)単位ではなく受贈者単位で考えます。

 

 

例えばAさんが、同じ年に最初にBさんから60万円、次にCさんから61万円を贈与されたら、Aさんを単位とするのでCさんから貰った分の1万円がオーバーし、これが課税対象となり贈与税がかかってきます。

 

不動産についても考え方は同じで、贈与された市場価値から基礎控除を引いて残った分が課税対象になります。

 

ですから前項の①低額譲り受けによる利益や②不動産の名義変更、③の扶養義務を超える援助、④債務免除益などはそれぞれ実質的に得られたと考えられる利益の価額が課税対象にされます。

 

計算においては課税対象に税率をかけて税額を算出しますが、これが法改正でルールの大きな変更がありました。

 

従来は単純に「課税対象の価額×税率」で済んでいたのですが、贈与者と受贈者の関係を見て財産を二つの種類に分け、それぞれに異なる税率が適用されるようになったのです。

 

財産の種類は以下の二つです。

 

①特例贈与財産

 

親や祖父母などの直系尊属から、贈与年の1月1日において20歳以上となる直系尊属(子や孫など)に対してなされた贈与財産

 

②一般贈与財産

 

上記①以外の財産

 

では①の特例贈与財産の税率を見てみます。

 

課税価格(基礎控除を引いた価額) 対応税率 控除額
200万円以下 10% 控除無し
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1000万円以下 30% 90万円
1500万円以下 40% 190万円
3000万円以下 45% 265万円
4500万円以下 50% 415万円
4500万円超 55% 640万円

 

例えば前項①の低額譲渡のパターンで、父親が息子に市場価値1000万円の家屋を100万円で低額譲渡したとしましょう。

 

この場合、息子は1000万円-100万円=900万円の利益を得たとみなされます。

 

そして900万円×30%-90万円=180万円の贈与税が課税されることになります。

 

善意で家族に安く財産を譲ってやりたいとして出た行為でも、その相手が思わぬ税金を取られてしまうこともあるので注意が必要です。

 

次に一般贈与財産について、税率は以下のようになります。

 

課税価格(基礎控除を引いた価額) 対応税率 控除額
200万円以下 10% 控除無し
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1000万円以下 40% 125万円
1500万円以下 45% 175万円
3000万円以下 50% 250万円
3000万円超 55% 400万円

 

 

贈与税の法改正は消費意欲が旺盛な若年世代に財産移転がしやすくなるように配慮されたものであるため、特例贈与財産と一般贈与財産を比較すると、特例贈与財産の方が負担が軽くなる様に設計されています。

 

例えば一般贈与財産は3000万円を超えると一律55%の税率になりますが、特例贈与財産の方は4500万円を超えなければ55%になりません。

 

 

■まとめ

 

この章では不動産と贈与税の関係について見てきました。

 

不動産も財産ですから贈与すれば贈与税の課税対象になりますが、問題は一般市民の感覚と、取り締まる課税当局との見解では贈与ついての考え方、目のつけどころが違ってくるので、予期せず課税の標的にされてしまう恐れがあるということです。

 

不動産は今流行りの仮装通貨などと違って取引の流れや利益を得る者の把握がしやすいので、税務当局から見れば税金を取りやすい性質があります。

 

賛否両論ありますが、「取りやすいところから取る」のが現実的な徴税路線ですので、不動産のオーナーや不動産で利益を出している人、ビジネスをしている人は標的にされやすいという認識でいる必要があります。

 

なお不動産は相続対策として生前贈与が検討されることがありますが、一般に贈与税は相続税よりも負担が重いのでそのまま実行すると損をすることが多いです。

 

贈与税を避けつつ生前贈与する方法もいくつかあるので、別の機会にご紹介したいと思います。

 

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ABOUTこの記事をかいた人

京都府出身。大学卒業後、新卒で上場IT商社に入社。 法人向けのITコンサルタントとして業務の効率化、WEBを活用した集客・営業コンサルティングを実施。 その後国内コンサルティングファームにて不動産業専門のコンサルティングに従事。役職はチームリーダー、全国のクライアントの経営顧問をしている。 専門分野は仕事上、不動産・新築住宅・WEB・IT分野などなど。 読書・資格取得・ITツールやアプリ導入などが趣味