共有不動産は危険?リスクやデメリット、対処法を確認




 

最近は住居や自動車、あるいは洋服やバッグまで、個人で所有せずに他人とシェアするシェアリングサービスが広まっていますね。

 

資源の有効活用や個人負担の軽減など多くのメリットがあるので、今後も色々な方向に拡大していくものと思われます。

 

上のシェアリングサービスも一つの物を複数人で一緒に使うという意味合いから「共有する」と訳すことができますが、この章で扱う「共有」はかなり性質が違います。

 

不動産は本来とても大きな価値を持つものですが、法律上の共有状態にある不動産はその価値を発揮できず、かえってお荷物になってしまうこともあり、現実に困っているに人が大勢います。

 

この章では法律上の共有状態にある不動産のリスクデメリット問題への対処法などについて詳しく解説していきます。

 

 

■法律上の共有状態とは?

 

不動産にかかる法律上の共有状態というのは「一緒に使う」という意味合いではありません。

 

もちろん一緒に使うこともできるのですが、この場合はその不動産全体に対する所有権者としての権利が共有状態にあることをいいます。

 

 

相続で受け継がれる不動産によく起こるので例を出してみましょう。

 

親が亡くなり三人の子が実家を相続するとします。

 

親が遺言書を残していない場合、三人の相続分は原則として三分の一ずつです。

 

つまり実家の所有権も三分の一ずつということになります。

 

この時、実家全体の所有権について子がそれぞれ三分の一ずつの「持分」を取得するのが法律上の共有です。

 

もし遺言があって、「長男には実家の所有権の四分の二を、二男には四分の一、三男にも四分の一を相続させる」となっていれば、その通りの持分権利を取得することになります。

 

持分は登記を行うことで外部に表示することが可能です。

 

共有状態であっても、当面の使用に支障がばければしばらくは問題は起きません。

 

問題が表面化するのは特にその不動産を売る時です。

 

何が問題になるのか次の項で見てみます。

 

 

■共有不動産は全員の合意が無いと売れない

 

複数人で共有状態にある不動産は利活用に制限が出ます。

 

共有状態にある不動産に対してできる行為は、法律上以下のような3種類が規定されています。

 

①変更・処分行為

 

売却したり、建て替えなどその不動産の性質を大きく変えてしまうような行為です。

 

②管理行為

 

例えばその不動産を貸し出して利益を上げるなどの行為があたります。

 

③保存行為

 

必要箇所を修繕するなど、他の共有者に影響が及ばない範囲でその不動産の状態を維持することです。

 

このうち、①は他の共有者への影響が大きいことから、共有者全員の同意がなければ行うことができません。

 

持分の大きさに関わらず、「全員の同意」が必要なため、誰かが売りたいと思っても他の共有者が反対すれば売ることができないということです。

 

これが賃貸に出すなどの②であれば、持分価格の過半数の権利者の同意があれば実行可能になります。

 

③は共有者が各自単独で行えます。

 

最も制限される①の処分行為、すなわち売却の際に問題が表面化することが多く、売却の手続きにあたっては巨優者の同意が取れても取れなくても、特別な配慮をが必要になってきます。

 

 

■共有不動産を売るにはどうするか(同意が取れたパターン)

 

共有者全員が売却に同意した場合は内輪で揉めることはありませんが、売却の実務上は少し面倒が残ります。

 

対象不動産の名義人が複数人となるので、その全員が連名で契約書にサインしなければなりません。

 

当然その際の本人確認が必要ですから、全員分の住民票や印鑑証明書など必要書類を収集し、全員分を揃えて契約に臨みます。

 

代表者を一人決めてその者に任せることもできますが、必ず委任状が必要です。

 

委任状があっても相手方によってうまくいかないこともあります。

 

少し前に、大手不動産業者が地面師に騙された詐欺事件がありましたね。

 

不動産の取引は大きな金額が動くので、ただでさえ慎重に動かなければなりませんが、このような事件があるとなおさら過敏になります。

 

買い手には「目の前の代理人が本当に権利者なのか?委任状も偽造されているかもしれない」という注意喚起が常に頭によぎるので、委任状があっても別途確認作業を要求されることもあります。

 

買い主が他の共有者と個別に面談して確認を取れなければ取引を進めないという姿勢の場合、進行がスムーズにいかないこともあります。

 

委任状があれば必ず取引に応じなければならないというルールが無い以上、買い手が納得いくまで確認作業に付き合わなければなりません。

 

これに難を示せば買い手が契約から離脱してしまうリスクもあるので、売り手としては辛いところです。

 

 

■共有不動産が売れたら売上金はどうなる?

 

全員の合意のもと首尾よく物件を売ることができたら、売却代金を各共有権者で分けることになります。

 

取り分は所有権全体に対する各権利者の持分に従います。

 

この時、実際の取り分が持分と異なる場合は問題が生じることがあります。

 

当事者同士の交渉で売却代金の取り分割合を変更することは可能ではありますが、ここに税金の問題が絡んできます。

 

本来の持分よりも多く売却代金を受領した場合、これは他の共有者から贈与を受けたとみなされて贈与税が課税されてしまうことがあります。

 

贈与税のリスクについては他にも注意点があるので後述しています。

 

特段の事情が無ければ、本来の持分に従って売却代金をとりわけ、各自が不動産譲渡所得税の計算をし、必要に応じて申告納税という運びになります。

 

 

■同意が取れない場合の対処法1:分筆

 

共有者全員の同意が取れなければその不動産は売ることができません。

 

共有者の一人が資金難で不動産を換金したいといっても、他の共有者が拒否すれば売ることができませんから、その場合は特別な方策を取る必要があります。

 

一つが分筆という方法で、一つの土地を登記簿上で分けて所有権者を別々にします。

 

各土地は小さくなりますが、単独所有とすることができるので売却も単独で行えます。

 

しかし分筆には以下のようなデメリットもあるので、実行あったってはよく検討しなければなりません。

 

①買い手が納得するか?

 

分筆後は元々の土地が分割されてしまいますから、売却を望む者が取得した土地の広さや形状に買い手が納得してくれるかが問題になります。

 

分筆する前に、全共有者だけでなく買い手も含めてどのように分割するか膝を詰めた相談が必要です。

 

②分筆後の価値は平等でない

 

分筆を行うと、各土地の価値に差が出ることがあります。

 

単純に面積が広い方が良いというものではありません。

 

同じ面積でも道路に面している土地の方が面していない土地よりも価値が高くなりますし、細い道路より太い道路に面している方が価値が高くなります。

 

将来相続が起きた時の相続税評価額にも大きく影響してきますので、分筆の交渉自体が難化する可能性が十分にあります。

 

③費用がかかる

 

分筆には測量作業や登記などで費用がかかります。

 

不動産を売る理由が必要資金の調達である場合は出費が苦しくなるでしょう。

 

④家屋は分筆できない

 

分筆は土地はできますが家屋はできません。

 

家屋を売りたい場合は次項のような別の対処が必要です。

 

 

■同意が取れない場合の対処法2:持分の買い取り

 

家屋は分筆ができませんが、この場合は持分の買い取りの方法を検討することができます。

 

持分の買い取りは、自分の持分を他の共有者に買い取ってもらうか、逆に他の共有者の持分を自分が買い取るかの二つの方法があります。

 

現金が欲しいのがあなたで、他の共有者はその不動産を売りたくないというのであれば、あなたが自分の持分を他の共有者に買い取ってもらうのがシンプルです。

 

他の共有者が買い取りに同意してくれれば、あなたは現金を手にすることができ、他の共有者は自分の持分が増えることに繋がり、不動産を売却せずに済みます。

 

当然買い取るには資金が必要ですので、出費を嫌がって買い取ってもらえない可能性があることは承知しておく必要があります。

 

他の共有者に手っ取り早く現金が欲しい事情がある場合には。逆にこちらがその共有者の持分を買い取ってもいいでしょう。

 

 

共有者の持分を取得して上で、不動産全体を購入希望者に売却することができるようになります。

 

共有者に事情がある場合は本来の価値よりも幾分安く手に入れることができるかもしれません。

 

ただし、持分の無償譲渡や著しく低廉な価額での譲渡は問題が生じます。

 

これを次の項で確認します。

 

 

■親族間の持分取引ではここに注意

 

不動産の共有が親族間でなされている時には、持分取引について注意しなければならない点があります。

 

別の章でもお伝えしていましたが、財産を本来の価値よりも著しく低額で譲渡したり、あるいは無償で譲渡した場合は、本来の価値との差額が相手に贈与されたとみなされ、贈与税の課税対象にされてしまうことがあります。

 

不動産の持分はそれ自体に財産的価値があるとみなされるので、持分の譲渡も贈与税の対象になってきます。

 

売却に共有者が前向きで内輪で持分の売買調整する際に、親族だからと持分を安く譲ってあげるということはありがちです。

 

個別ケースで専門家の意見を聞く必要がありますが、無償あるいは市場価値よりもかなり低い価格で譲ろうとするケースでは税務当局の課税に注意が必要になります。

 

 

■持分を共有者以外に売れる?

 

共有者間での持分の取引がうまくいかないこともあるでしょう。

 

例えば自宅不動産について、どうしても売りたくないし、自分が引き続きその家に住み続けたいという者がいれば、分筆や持分の取引に頑として応じないこともあります。

 

あなたの持分を買い取ってもらうにも、資金が無ければ買い取ってもらうことができません。

 

そこで、もしあなたが市場で自分の持分を売ることができれが現金を手にすることができます。

 

実際これも不可能ではありませんが、市場での持分売却はまず無理です。

 

理由は、仮に他人の不動産持分を買い取ったとしても自分の思い通りに不動産を使えないからです。

 

持分を買い取っても当該不動産の共有者の一人になるにすぎませんから、結局好きな時に売れませんし、自由利用も制限されます。

 

ビジネス的な目線で、賃貸物件ですでに大きな利益を生んでいてその利益狙いで持分を取得するなどのケースもあるかもしれませんが、個人間の事例で持分が取り引きされることはまずありません。

 

売りたくても売れないというのが現実でしょう。

 

 

 

■不動産は単独所有登記を

 

特殊な事情から一時的に共有状態にするというケースも中にはありますが、これまで見てきたような弊害やリスクを考えると、特段の事情が無ければ極力不動産は共有とせず、誰か一人の単独所有としておくことが推奨されます。

 

不動産が共有となりやすいのは相続が起きた時で、複数相続人がおり遺言による不動産の共有指示がある時、または遺言書がないときは最初は強制的に共有となります。

 

遺産分割協議がなかなか整わなかったりすると、そのままずるずると共有状態が続いてしまい、交渉や登記などの手続きも面倒になってそのままになってしまうことがよくあります。

 

確かにしばらくは問題がなくとも、売却などのアクションが必要になった時や将来また相続が起きて不動産の権利者が増えた時に大変面倒なことになります。

 

しばらくは問題が無さそうでも、後々大変な苦労をする可能性があるので、問題が複雑化する前に話をまとめ、誰が一人の単独所有の登記をしておくようにしましょう。

 

 

■まとめ

 

この章では不動産が共有状態にあることリスクやデメリット、問題が生じた際の対処策などについて見てきました。

 

共有不動産は権利者全員の合意がなければ売ることができないので、仮に持分が9割あったとしても自分だけの意思で売ることはできません。

 

同意を取り付けるのに難航することもありますから、時間をかけて丁寧に話し合う必要があります。

 

分筆や持分譲渡による工夫も検討できますが、分筆は家屋には適用できないことや費用がかかるなどの問題があります。

 

持分譲渡も必ず上手くいくとは限りませんし、低額譲渡や無償譲渡は贈与税に気を付ける必要があるなど落とし穴もあります。

 

一番良いのは共有とならないように最初から単独所有としておくことですが、すでに何かトラブルが起きている、起きる兆候がある場合は早めに不動産の専門家に相談するようにしましょう。

 

不動産を売ったら贈与税が課税された!?不動産と贈与税の意外な関係

2019年5月28日

不動産売却を完結させるまでの流れと必要期間

2019年5月27日

不動産を売る時の手数料の仕組みと実態・注意すべき点について

2019年5月26日

不動産売却で役に立つ一括査定サイトとは?メリット・デメリットと利用の注意点

2019年5月25日

 




ABOUTこの記事をかいた人

京都府出身。大学卒業後、新卒で上場IT商社に入社。 法人向けのITコンサルタントとして業務の効率化、WEBを活用した集客・営業コンサルティングを実施。 その後国内コンサルティングファームにて不動産業専門のコンサルティングに従事。役職はチームリーダー、全国のクライアントの経営顧問をしている。 専門分野は仕事上、不動産・新築住宅・WEB・IT分野などなど。 読書・資格取得・ITツールやアプリ導入などが趣味